- コラム
遺言によって公的団体等に寄付したい場合の注意点
遺言によって公的な団体等に寄付することはできますが、注意が必要です。
寄付とは、公益・公共の目的のために、市町村、学校、福祉施設、宗教団体等に対して自分の財産を譲渡するものです。
寄付は、生前だけではなく、遺言によって行うことができます。
ただ、当然ながら、遺言によって寄付を行う場合、その寄付の効力が生じるのは、遺言を残した方が亡くなった後になります。
ですから、遺言によって寄付を行おうとする場合には、自分の死後に自分の想いが確実に実現できるように、次のことに注意する必要があります。
寄付の相手方をしっかり特定する。
遺言によって寄付をするということは、寄付をするときには自分自身はこの世にいません。
遺言書の内容で、寄付をする相手方を明確に特定しておかなければ、遺言の内容を実現する人(遺言執行者)も困ってしまいます。
遺言によって寄付をする場合、次のように相手方をしっかり特定しましょう。
相手が個人の場合
- 「氏名」「住所」「職業」「生年月日」などで特定し、遺言書に記しましょう。
相手が団体の場合
- 「法人格の有無」「団体の正式名称」「団体の主たる事務所所在地」「代表者に関する事項」などを特定し、遺言書に記しましょう・
- 法人であれば、法務局で登記事項証明書を取得すれば、特定するのに十分な情報が得られます。
- 法人格のない団体(権能なき社団といいます)の場合、「団体としての組織を備えて、多数決の原則が行われていて、代表者が選ばれ、構成員が変わっても団体そのものは存続し、総会が運営され、団体の財産がしっかり管理されている」団体である必要があります。また、権能なき社団に対して不動産を寄付する場合、団体名義で不動産登記することができません。その団体の代表者個人の名義で不動産登記する必要があります。
相手が決まっていない場合
裁判例では、「遺産の全部を公共に寄付する」といった内容の遺言について、その遺言を有効とした例があります。
こうした場合、遺言執行者等が、その遺言の目的を達成できるような団体を寄付の相手先として選定することになります。
しかし、その相手先が公益目的の団体であるかどうかなど、疑義が生じるおそれもあります。
せっかく残した遺言書が無効とされたり、その遺言書がもとでトラブルになってはいけません。
ですから、遺言で寄付をする場合には、遺言書に相手方を明確に特定して記しておくことをおすすめします。
寄付の相手方の気持ちを確認する。
遺言は、一方的な意思表示です。
ですから、遺言書を作成するにあたって、寄付の相手方から事前に同意を得ておく必要などありません。
しかし、中には寄付を受け付けないという場合も考えられます。
特に、不動産や動産などの場合、換価処分が難しいとか、その維持や管理が大変であるといった理由で寄付を拒否される例も多いようです。
先にも記しましたとおり、遺言によって寄付をするということは、寄付が実行されるとき、自分自身はこの世におりません。
遺言による寄付が拒否された場合に、遺言の内容を実現する人(遺言執行者)が困ってしまいます。
ですから、遺言によって寄付をしようとする場合には、事前に相手方と相談し、遺言による寄付を受け付けてもらえるかどうかなどについて事前調査し、確実に遺言が実現できるように準備しておいた方が良いでしょう。
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