- なんでも相談
公正証書遺言を自筆証書遺言で書き直すことはできますか?
宮澤先生初めまして。長野県松本市の相続悩み人と申します。
自分の死後の相続を考えた時に、公正証書遺言を残した方が家族たちが楽だろうと考え、1年ほど前に公正証書遺言を作成しました。
その際には、やはり家を継ぐ長男にすべての財産を相続させた方が良いだろうと考え、長男に全財産を相続させるという内容の遺言にしました。
しかし、この1年悩み、嫁に出て行ったとはいえ、もう一人の子どもである長女のことも考えてあげないといけないなと思うに至りました。
ただ、実は現在病院に入院中のため、公正証書遺言を作るために行政書士先生と打ち合わせをすることも、公証役場に行くのも正直言ってしんどい状況です。
できれば自分で書いて新しい遺言を残したいと考えています。
1年前に作った公正遺言証書を全面的に変える形で、自筆の遺言を作成しても、有効でしょうか。
良いお知恵をいただきたくお願い申し上げます。
長野県松本市の相続悩み人より
公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することも可能です。
ただし、お勧めしません。
公正証書遺言で書き直してはいかがでしょうか。
公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することは可能です。
遺言書は何度でも撤回することが可能です。
撤回の方法は簡単で、新たな遺言書を書けば、以前に書いた遺言書とバッティングする内容であれば、新たに書いた遺言書の内容が優先されます。
ですから、複数の遺言書がある場合には、「遺言書の日付」が重視されます。
イメージ的に、「公正証書遺言と自筆証書遺言が残されている場合、公正証書遺言の方が法的に有効だ」と思われがちですが、実は複数の遺言書がある場合でも、公正証書遺言が自筆証書遺言より優先されることはありません。
ですから、質問への最初のお答えとしては、「自筆証書遺言で1年前の公正証書遺言の内容を撤回し、書き換えることは可能」ということになります。
しかし、自筆証書遺言にはデメリットが多いので注意が必要です。
自筆証書遺言には厳格なルールがあり、守られていないと無効
自筆証書遺言には、「本人が直筆で書く」「日付を書く」などの細かなルールがあり、それが守られていないと無効として扱われます。
生半可な知識で書くのは危険です。
参考記事⇒「自筆証書遺言の作り方」
参考記事⇒自筆証書遺言を作るときに気を付けること」
参考記事⇒「遺言書の種類と特徴(公正証書遺言と自筆証書遺言)」
自筆証書遺言は、あなたが亡くなった後の手続きに手間がかかる
実際にあなたが亡くなってしまった後の手続きに、自筆証書遺言と公正証書遺言では差があります。
公正証書遺言の場合、家庭裁判所で検認の手続きをする必要はありません。
しかし、自筆証書遺言の場合は、相続人全員の戸籍を集めた上で、家庭裁判所で検認の手続きをしなければなりません。
この検認の手続きには、かなり時間がかかってしまうこともあります。
また、検認の手続きは自筆証書遺言の内容について有効か無効かを判断するものではありませんから、やっと検認の手続きを終えても、その自筆証書遺言で金融機関などで相続手続きをしようとしても受け付けてもらえない可能性もあります。
ご家族が葬儀費用などを立て替えた場合、すぐに口座からその費用を引き出せないということもあり得ます。
参考記事⇒「自筆証書遺言は、そのままでは使えません!~遺言書の検認~」
参考記事⇒「遺言書は公正証書にした方が安心です!」
ご家族のためを思うなら、公正証書遺言で書き換えてはいかがでしょうか
以上の理由から、せっかくご家族のことを思って1年前に公正証書遺言を作成されたのであれば、書き換えも公正証書にすることをお勧めします。
入院中ということですが、公証人に出張してもらう方法もあります。
文案作成のために、行政書士等の専門家に相談したい場合でも、大抵の専門家は出張相談に応じてくれるはずです。
(出張相談に応じてくれないような専門家なら、他を当たれば良いのです。)
自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回することはできますが、お勧めしないと申し上げたのは、以上の理由からです。
多少費用はかかりますが、公正証書遺言で書き換えてはいかがでしょうか。
相続・遺言書・老後のそなえ(成年後見)について詳しく知りたい方へ
⇒「相続」に関するコラム
⇒「遺言書」に関するコラム
⇒「老後のそなえ」に関するコラム
こんなお悩みやお困りごとを解決します!
⇒「相続手続き」を失敗したくない
⇒確実に実現される「遺言書」を作りたい
⇒老後の不安をなくしたい