- コラム
遺言書の内容と異なる形で相続する方法
相続人全員が合意すれば、遺言書の内容と異なる形で相続することができます。
例えば、亡くなった父親が「長男に自宅の土地と建物を相続させる。」という遺言書を残していたとします。
しかし、その長男は別の場所に住んでいて、この土地と建物には次男が母親と同居しているとします。
そして、次男も母親も、これからも一緒に暮らしていくことを望んでいるとします。
このような状況の場合、亡くなった父親が残した遺言書どおりに相続することになると、相続人である長男、次男、母親(妻)にとって不都合が生じてしまいます。
それでも遺言書のとおり相続しなければいけないかというと、そんなことはありません。
次のような要領で手続きを進めれば、遺言書の内容と異なる形で相続することができます。
相続人全員で遺産分割協議を行い、全員が合意することが条件
遺言書を残した方が亡くなると、その瞬間に遺言書の効力が生じます。
しかし、上記の例のように、相続人が望まない状況が生じてしまうことがあります。
このような場合、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行い、相続人全員が合意すれば、遺言書の内容と異なる形で相続することができます。
ポイントは2つです。
- 相続人全員が遺言書の内容に従わないことに同意する。
- 相続人全員でどのように遺産を分けるのかを決め、それに全員が合意する。
遺産分割協議書を作成する(できれば公正証書で)
上記の話し合い(遺産分割協議)で合意した内容を「遺産分割協議書」にまとめ、相続人全員が署名押印します。
この時に押印する印鑑は、いわゆる実印(印鑑登録してある印)を用い、遺産分割協議書には相続人全員分の印鑑等証明書を添付しておきます。
この「遺産分割協議書」は、後日の紛争を防止する意味でも、公正証書にした方が良いでしょう。
遺産分割の内容に加えて、「遺言書が残されていたけれど、その遺言書の内容と異なる遺産分割をすることについて相続人全員が合意した」ことも公正証書に記しておくのです。
遺言書で財産を受け取ることとなっていた方の気持ちが、どこでどのように移り変わるかは分かりません。
生きていれば様々な環境の変化があります。
後になって「あの時、財産を相続するはずだったのに・・・」などと蒸し返されないようにしておくことが大切なポイントです。
相続のシーンでは、関係者は相続人だけではありません。
相続人の配偶者、子ども、その他親戚・・・様々な「外野」が口を出し、それが「争族」のタネになるのです。
「合意すれば良い」だけではなく、それをきちんとした文書に残すことで、後からの紛争を防止するのです。
遺言書に「遺言執行者」が指定されている場合
遺言書に「遺言執行者」が指定されている場合があります。
「遺言執行者」というのは、遺言の内容を実現する役割を果たさなければいけない人で、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利や義務を持っています。
この「遺言執行者」が指定されている場合、相続人は相続財産を勝手に分け合ったり売ったりするなど、一切の処分行為ができません。
ですから「遺言執行者」が指定されていると、遺言書の内容と違う遺産の分け方をすることが困難になります。
しかし、裁判例では「遺言書の内容を知りながら行った、相続人全員による遺産分割協議の内容は有効である」としています。
つまり、「遺言執行者」が指定されていても、相続人全員が合意すれば、遺言書の内容に縛られない相続が可能であるということになります。
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