- なんでも相談
相続放棄する約束で結婚したら、約束どおり相続放棄が必要か。
はじめてお尋ねします。松本市の者です。
私は62歳になりますが、最近5歳年上の主人と結婚しました。
私も主人も再婚です。
結婚に対して、私の子どもは賛成してくれましたが、主人の子ども達が猛反対しました。
その理由は相続です。私が主人の妻になると、私が自動的に主人の相続人となって財産の半分を相続することになるので、自分たちの相続分が減ることになってしまう子ども達は、それが嫌で猛反対していたのです。
私も主人も、お互いに人生を支えるパートナーとして結婚したかったので、私はやむなく、主人の子ども達に対して、主人が私より先に亡くなっても、私は主人の財産については相続を放棄するという約束をして結婚しました。
もちろん約束は守りたいとは思っていますが、正直、主人が亡くなった後の住まいや生活をどうするかなどを考えると不安です。
主人にもしものことがあったら、私は約束どおり主人の財産は相続できないのでしょうか。
相続開始前の相続放棄や相続放棄をする約束は無効です
はじめまして。ご質問ありがとうございます。
お尋ねについてお答えいたします。
法律上みとめられない約束・契約もあります
まず、法律では相続開始前の相続放棄はできないと定められています。
つまり、ご主人様が亡くなる前に、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをすることはできないということです。
これは、「夫が亡くなった時には相続放棄をします。」という、相続放棄をする約束・契約でも同じです。
たとえ契約書のような書面に残していたとしても無効です。
約束や契約であったとしても、法律上認められないものである場合には、その約束や契約は効力を生じないのです。
結婚をすることについて、相手方配偶者が亡くなってもその相続を放棄するという条件をつけることは許されません。
条件をつけることによって、従わなければいけない法律や、公の秩序に反する結果となる場合には、その条件をつけることが許されないのです。
そもそも、相続放棄は家庭裁判所に申立てをする必要があります
相続放棄は、相続人が自分のために相続があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
それが認められて初めて「相続放棄」したことになるわけです。
ですから、そもそも相続発生の前に相続放棄をする約束をしたとしても、それをもって相続放棄したことになるのではありません。
相続放棄をする約束をしていても、その約束は無効
以上2つの理由から、あなたがご主人の子ども達との間で行った相続放棄の約束は、法律上の効果はもたないものと考えられます。
ご主人に遺言書を残してもらうなどの対策をしておいた方が良いでしょう
上記のとおり相続放棄の約束は、法律上の効果は持たないものと考えられます。
しかし、感情の問題が残ります。
ご主人様の子ども達とすれば、あなたとご主人様の結婚を認める代わりに、相続放棄の約束をしたと思っているわけですから、その約束が果たされないとなれば、あなたとご主人様の子ども達の間で揉めごとが起きるだろうことは容易に考えられます。
その時、ご主人の子ども達に対して、「法律上は相続放棄の約束は無効だ」などと言ったところで、火に油を注ぐようなものです。
法律は、感情の問題を解決することはできません。
訴訟ともなれば費用も時間もかかります。
また、争いによって遺産分割の話し合いが進まなければ、ご主人様の財産は自由になりません。
ご主人様がお元気なうちに、子ども達と「相続について、自分の死後のあなたの生活のことも考えてあげたい。」といった話しをしてもらって、子ども達の理解を得たり、子ども達が納得するだけの財産の贈与をしたり、あなたに相続させる旨の遺言書を残してもらうなど、ご夫婦でも話し合ってできる限りの対策をしておいた方が良いでしょう。
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