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相続手続き後に遺言が無効であることが判明したら、どうしたら良い?

私の父は、生前に遺言書を作成していて、その内容は「兄が全財産を相続する」というものでした。
その遺言書の内容に、もちろん不満はありましたが、もめるのも嫌でしたから了承しました。
ところが、その遺言書は、兄が既に判断能力の衰えた父に無理やり書かせたものであることが分かりました。
私は、裁判で遺言書の無効を訴えたいと思っていますが、もし遺言書が無効となった場合、既に兄に相続されてしまった遺産はどうなるのでしようか。

  • 行政書士 宮澤優一 より:

    改めて相続人全員で遺産分割協議が必要です。

    遺言書が無効とされた場合、その遺言に従って行われた遺産の分割は無効となりますから、相続人全員によって、改めて遺産分割協議を行うことが必要となります。

    なお、お父様に無理矢理に遺言を書かせたことが証明できれば、お兄様は「相続欠格」になる可能性もあります。

    相続欠格事由に該当した相続人は、裁判手続きなどをすることなく相続の権利を失います。

    【参考記事】

    遺言書を残すことを強要してはいけない!

    遺言能力について

    民法では満15歳で遺言を作成することができると定められています。

    ただし、満15歳なら誰でも有効な遺言を作成できるかというと、そうではありません。

    有効な遺言とするためには、遺言の内容を理解し、判断できるだけの能力が必要です。

    それを、遺言能力といいます。

    遺言能力は、遺言を作成する時点で必要です。

    遺言能力の有無を判断するに際しては、画一的な判断基準があるわけではありません。

    遺言の内容が複雑さや、遺言を書いた人の心身の状態など、ケースごとに事情が異なるからです。

    そのため、遺言能力の有無については、遺言を書いた人が、その当時、遺産の種類や数、遺言によって遺産を贈るとした相手、遺言を書いた本人の意思能力の程度などの、個別具体的な事情に照らして、遺言を書いた人が、遺言の内容を理解していたかどうかを判断しなければなりません。

    遺言能力を欠いた遺言は無効

    遺言能力を欠いた遺言は、無効となります。

    遺言が無効だと裁判で主張する方法としては、次の方法が考えられます。

    ・端的に「遺言無効確認の訴え」 を提起するという方法。

    ・無効な遺言に従って行われた財産処分行為の効力を否定する訴訟において、その請求原因として遺言の無効を主張するという方法。

    【参考記事】

    公正証書遺言が無効になってしまうこともあります。

     

    無効な遺言に従った遺産分割の効力

    遺言が無効とされた場合、その遺言に従って行われた遺産の分割は無効となります。

    相続人全員によって、改めて遺産分割協議を行い、遺産を分割する必要が生じます。

    ただ、無効な遺言に従って財産を取得した相続人が、その財産を売ったりしてしまった場合、その相手方が保護されるので、その財産は遺産分割協議の対象から外さなければいけません。

    民法という法律で、そのように定められているのです。(動産の即時取得や債権の準占有者への支払いなど場合。)

    このような場合、無効な遺言に従って財産を取得した相続人は、その財産を売ったりして利益を得ているわけですから、他の相続人は「無効な遺言で不当な利益を得ているのだから、その利益分は返しなさい。」と言うことができます。

    もし、相続人間での遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に対して遺産分割調停を申し立てることができます。

    家庭裁判所における調停が調わなければ、裁判所による遣産分割審判によって最終的な解決が図られることになります。

    不動産の登記や税務上の問題

    不動産の場合、無効な遺言に基づいてなされた特定の相続人への登記について、その者も相続人である以上、全ての登記を抹消するのは適当ではありません。

    全ての相続人名義の相続登記に更正登記をすることとなります。

    その上で、遺産分割協議によって最終的にその不動産を取得した相続人が、その不動産を取得した根拠となる遺産分割協議書を用いて、自分1人の名義とする持分移転登記をすることが考えられます。

    無効な遺言に基づいて、相続人が既に相続税を納付している場合には、遺産分割協議の結果に基づき相続税を再計算し、更正の請求、相続税の期限後申告、修正申告などの要否を検討し、相続税の還付を求めたり、相続税の納付を行うこととなります。

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