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印鑑の押印ではなくて、拇印がしてある遺言は有効?

母は、私に全財産を贈るという遺言を残して亡くなりました。
頭はしっかりしていた母は、自分で遺言を書いたのです。
自筆証書遺言というものです。
ところが、その自筆証書遺言には、印鑑の押印がなく、そのかわりに拇印が押されていました。
他の姉妹から、「その遺言は無効なんじゃないか」と文句を言われています。
この遺言は有効でしょうか、無効でしょうか。

  • 行政書士 宮澤優一 より:

    拇印による押印であっても、自筆証書遺言として有効と考えられます。

    遺言は、民法という法律に決められた方法に従って書かなければいけません。

    自筆証書遺言は、「遺言を書く本人が、全文、日付、氏名を自分で書き、さらに押印しなければいけない」と決められているのです。

    この方法がひとつでも守られていなければ、その遺言は無効です。

    このうち、押印は、印章によって押捺するのが一般的と思いますが、印章に代えて指印(拇印)でも問題ないと考えられます。

    自筆証書遺言における押印と指印

    自筆証書遺言の方法として、全文、日付、氏名を自分で書き、さらに押印が必要であると決められている趣旨は、大きく2つあります。

    1つは、遺言の全文を本人が自分で書くことによって、たしかに本人が本人の意思で書いた遺言だということを担保することです。

    もう1つは、重要な文書は、作成した人が署名押印することによって文書を完成させるという、日本の慣行や法意識に照らして、文書の完成を担保することです。

    この趣旨からすると、本人が遺言の全文、日付、氏名を自分で書いているのであれば、遺言を書いた本人の真意を担保することはできます。

    また、一般的に、実印による押印が必要とされていない文書は、文書作成者の指印があれば印章による押印があるのと同様の意義を認めている日本の慣行や法意識に照らすと、指印があれば文書の完成ということができます。

    自筆証書遺言には実印を押印する必要はありません。

    ですから、自筆証書遺言の押印が指印であったとしても、有効であると考えられます。

    【参考記事】

    自筆証書遺言の作り方

    自筆証書遺言を作るときに気をつけること

     

    これから自筆で遺言を作成しようと考えている方へ

    上記のとおり、遺言に押された印が指印でも、遺言書は有効であると考えられます。

    しかし、指印であった場合、指印が遺言を書いた本人のものか否か、遺言を書いた本人が自分の意思で押したものか否かが問題になってしまう可能性があります。

    指印は、実印に比べて、遺言を書いた本人のものであるとの確認が困難だからです。

    これから自筆で遺言を作成しようとお考えの方は、本人の印章であることの証明がしやすい実印や銀行届出印などを使用することが望ましいでしよう。

    確実性でいえば、自筆証書遺言より、公正証書遺言の方が確実に有効な遺言を残すことができます。

    当事務所もそのお手伝いをしていますので、お気軽にご相談ください。

    【参考記事】

    遺言書は公正証書にした方が安心です!

     

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