- なんでも相談
父の遺産は借金ばかりなので、相続人全員が相続放棄をしたい。
父が亡くなったので、相続手続きをしなければなりません。
父は自分で事業をやっていた関係で、遺産といえばかなり多額な借金だけで、その他に何も残していないことが分かっていますので、父の遺産は相続人全員で相続放棄をしようと考えています。
相続人の関係ですが、父は妻(つまり私の母親)と20年以上前に離婚しています。
子どもは、長男である私のほか弟がいます。
ただ、この弟は、母の再婚相手と養子縁組しています。
まず、このような場合には、弟も相続放棄の手続きをしなければいけないのでしょうか。
そして、亡くなった父には、母親と兄弟がいます。
母親は重度の認知症で介護施設に入所しています。
兄弟はもともと2人で、2人とも元気に生きています。
この人たちも相続放棄をしなければいけないということでしょうか。
恐れ入りますが、教えていただきたく投稿しました。
よろしくお願いします。
相続の順位にしたがって、相続放棄することになります
相続放棄を考える前に、まず「誰が相続人になるのか」を今一度、抑えておきましょう。
相続には順位があります。
法律が定める相続人の種類は、配偶者相続人と血族相続人の2つです。
まず、配偶者相続人ですが、亡くなった方の「夫や妻」は、常に相続人になります。
配偶者相続人以外の血族相続人には、次のとおり優先順位があります。
第1順位 子
第2順位 直系尊属(両親等)
第3順位 兄弟姉妹
先順位の相続人がいる場合は、後順位の人は相続人ではありません。
なお、普通養子縁組をした場合であっても、実親との親子関係がなくなるわけではありません。
ですから、お母様の再婚相手と養子縁組された弟様は、お父様の相続人になります。
さて、ご質問の件ですが、全員が相続放棄をしたいとのことですね。
まず、亡くなったお父様には配偶者相続人がおりません。
そうすると、この時点ではお父様の子どもである「あなた」と「弟様」だけが相続人なので、まずはこのお2人が相続放棄をします。
これが、ひとつめのご質問の答えになります。
弟様も相続放棄の手続きが必要です。
(もし弟様が既にお亡くなりになっていて、弟様に子ども(お父様から見て孫)がいるという場合には、その子どもが相続放棄しなければならないことになります。)
ここで「あなた」と「弟様」が相続放棄をすると、お二人は最初から相続人ではなかったということになります。
すると、第2順位で直系尊属が相続人となります。
ご質問の場合、お父様のお母様(あなたの祖母)が相続人となるわけですね。
ですから、あなたの祖母にも相続放棄の手続きが必要となります。
もうお分かりいただけると思いますが、あなたの祖母が相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったということになります。
直系尊属が誰もいないということになりますと、いよいよ第3順位である兄弟姉妹が相続人です。
お父様には2人の兄弟がいらっしゃるとのことですので、この2人が相続人になります。
(この兄弟に亡くなっている方がいる場合で、その方に子ども(つまり甥や姪)がいる場合には、その甥や姪が相続人になります。)
話を戻しますが、この2人の兄弟にも相続放棄の手続きが必要になります。
ここ(第3順位の相続人)まで、全員が相続放棄をすれば、相続人は誰もいないことになります。
認知症の方が相続放棄するには、成年後見人が必要
ここまでで1点注意しなければならないことがあります。
あなたの祖母が重度の認知症という点です。
相続についての理解が難しい状態であると推察いたします。
そうであれば、あなたの祖母はご自身で相続放棄の手続きをすることが出来ません。
「成年後見人」が必要になります。
成年後見人がいれば、その成年後見人があなたの祖母に代わって相続放棄の手続きをすることができます。
まだ祖母に成年後見人がついていないのであれば、家庭裁判所に成年後見の申立てをした方が良いでしょう。
ただ、今回の場合、祖母の親族が後見人に就任した場合、相続に関しては利害関係が生じてしまいます。
そのような場合、後見人であっても相続に関する手続きができず、後見人とは別に家庭裁判所に「特別代理人」を選任してもらう必要があります。
最初から第三者を後見人に選任してもらうこともできますので、参考にしてください。
ただし、後見人は相続放棄の手続きのためだけに選任されるものではありません。
今後、ずっと祖母を支えていく後見人となり、さまざまな後見人としての職務を遂行しなければいけません。
ですから、誰を後見人にするのかは慎重に考える必要があります。
相続放棄には期限があります
なお、相続放棄が出来るのは自分に相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内です。
もし、祖母に後見人がついたときは、祖母については後見人が知ったときからカウントされます。
少し複雑な事案になります。
少しでもご心配なことがあれば、法律の専門家にお尋ねすることをおすすめします。
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