先日、宮澤先生の相続セミナーに参加させていただきました。
とても、分かりやすく勉強になりました。
セミナーの中で、「相続人の中に認知症のように正常な判断能力を失った方がいる場合、そのままでは遺産分割協議を行うことができない。」という話しがありました。
実は、先日、母親が他界したのですが、父親がアルコール依存症のため入院治療中なのです。
遺産分割協議を進めたいのですが、相続人の1人である父親がアルコール依存症の場合、そのままでは遺産分割協議を進められないということでしょうか。
どうぞ宜しくお願い致します。
正常な判断能力があれば、アルコール依存症でも遺産分割協議に参加できる
先日はセミナーに足をお運びいただき、ありがとうございました。
ひかる様のお役に立てれば幸いに存じます。
今後も遺言書の書き方セミナーなどを催してまいりますので、ぜひいらしてください。
さて、ご質問の件についてお答えいたします。
判断能力が失われている方本人は遺産分割協議への参加ができない
セミナーでは、「相続人の中に認知症の方がいる場合、認知症の方を入れて行われた遺産分割の話し合いは無効になる。」といったお話をさせていただきました。
これはつまり、ご質問のとおり、「相続手続きができない」ことを意味します。
なぜなら、遺産分割の話し合い(遺産分割協議といいます)は、相続人全員が参加して、その参加者全員が「同意」をしなければ有効なものとされないのですが、認知症の方の場合、その同意をするだけの判断能力が無いからです。
この場合の判断能力というのは、「自分の財産を、誰に、どれだけあげる」ということと「それによって何が起こるのか」ということをしっかり理解できる能力のことを言います。
ですから、逆に言えば、医師から「認知症」と診断されていたとしても、その症状が軽度であれば判断能力はあるとして遺産分割協議が可能なケースもあるにはあります。
ただ、多くの場合、認知症を患っているケースでは判断能力の有無に疑義が生じます。
疑義が生じるようなことは避けた方が良いので、上記のようにお話しさせていただきました。
相続人の中に認知症などのために判断能力が失われて方がいる場合、遺産分割協議には本人に代わって後見人に参加してもらう必要があります。
病名の問題ではなく、正常な判断能力があるかどうか
ここからご質問の本題、アルコール依存症の場合です。
ポイントは、「病名の問題ではない」ということです。
認知症の例でお伝えしましたが、要は「自分の財産を、誰に、どれだけあげる」ということと「それによって何が起こるのか」ということを完全に理解できる判断能力を持っているかどうかが問題なのです。
「認知症」と診断されていたとしても、その症状が軽度であれば判断能力はあるとして遺産分割協議が可能なケースもあるというのは、そういうことなのです。
アルコール依存症や精神疾患でも考え方は同じです。
アルコールで泥酔状態となれば判断能力が失われているといって良いと思いますが、軽く酔っている程度であれば判断能力まで失われているとは言えないことが多いと思いますし、酔いから覚めていれば正常であることがほとんどであると思います。
精神疾患でも、鬱病であれば判断能力まで失われているとは言えないことが多いと思いますが、重度の統合失調症などであれば、判断能力が失われていると言って良いでしょう。
このように判断能力が失われている状態の方本人が参加して行われた遺産分割協議が「無効」となるのです。
つまり、そのままでは相続手続きができないということなのです。
アルコール依存症の方の場合、判断能力には問題が無いケースが多いのではないかと思います。
特に、病院にて入院治療中ということであれば、アルコールが断たれた状態であるはずです。
そうであれば、判断能力はあると考えてよろしいのではないかと思います。
この点について、医師に「判断能力の有無」を尋ねてみても良いと思います。
以上のとおり、「認知症やアルコール依存症という病名が問題ではなく、その方に判断能力があるかないかということが問題となる」というわけです。
判断能力があるのであれば、アルコール依存症であっても精神疾患であっても遺産分割協議に参加することは可能です。
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