- コラム
親に遺言書を残してもらった方が良い5つの理由
なぜ親に遺言書を残してもらった方が良いのか
「終活」という言葉が定着しつつあり、相続や遺言書を自分のこととして考える方が増えていると感じます。
書店では「遺言書の書き方」「相続の知識」などといった本がひとつのコーナーになっていたりします。
きっと多くの方が、何となく遺言書に興味を持ち、中には「遺言書を書いてみようかな。」とお考えになっておられる方もいると思います。
そのお考えは正しいです。
円満で円滑な相続のためには、遺言書は残した方が良いです。
なぜ遺言書を残した方が良いのでしょうか。
その理由は5つあります。
この理由をご覧いただければ、きっと「親に遺言書を残してもらおう。」と願うに違いありません。
1.遺言書があれば遺産分けの話し合いをしなくて済む
もし、親が遺言書を残さずに亡くなった場合、相続手続きのために相続人間で遺産分けの話し合い(遺産分割協議)をする必要があります。
この遺産分割協議には、厳しい2つのルールがあります。
1つめは、「相続人全員が、遺産分けの話し合いに参加しなければいけない」。
2つめは、「相続人全員が、遺産分けの内容に合意しなければいけない」。
親の遺産をめぐって起こる相続トラブルを「争族」と言いますが、この「争族」の原因の多くは、この2つのルールを守ることができないことにあるのです。
想像してみてください。
相続という、いわば臨時のボーナスのような大きな収入を前にして、次のような方と、親の遺産分けについて、冷静に話し合いをして折り合いをつけられるでしょうか。
- 異母、異父の兄弟姉妹
- 親の再婚相手
- 親の再婚相手の連れ子
- 甥や姪
- 昔から仲が悪かった兄弟姉妹
- 親からひいきされていたと思う兄弟姉妹
- 親の介護を一切しなかった兄弟姉妹やその配偶者
想像していただければ、お分かりいただけるはずです。
このような方々が話し合いを行うことは、かなりの労力を要するばかりか、話し合いができたとしても徒労に終わる可能性が高いのではないでしょうか。
しかし、親が遺言書を残してくれている場合、親が残した遺言書の内容に従って相続手続きをすれば、それで親の遺産を引き継ぐことができるのです。
遺言書があれば、遺産分割協議を一切せずに相続手続きが済むということです。
「争族」の大きな原因である遺産分割協議をしなくて済むわけですから、「争族」を回避できる可能性がとても高まります。
遺言書を残してもらう最大のメリットです。
2.遺言書があれば親の財産をスムーズに引き継ぐことができる
親が遺言書を残さずに亡くなった場合、親の預貯金口座を解約したり、名義変更といった相続手続きをするためには、遺産分割協議をしたあとに、各金融機関所定の用紙に相続人全員の署名、実印の押印が必要です。
さらに、遺産分割協議書や印鑑登録証明書などの提出が必要になります。
しかし、親が遺言書を残してくれていた場合、各金融機関所定の用紙に、遺言執行者の署名、実印の押印、印鑑登録証明書などの提出があれば、口座の解約や名義変更といった相続手続きを行うことができます。
遺言書があれば、遺言執行者がひとりで相続手続きをできるので、スムーズに財産を引き継ぐことができるのです。
なお、遺言書では遺言執行者を指定することができます。
ですから、遺言書を残してもらうのであれば、遺言執行者も指定しておいてもらった方が良いでしょう。
(遺言書で遺言執行者を指定していない場合、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申立てを申請して、選んでもらうことになります。)
3.遺言書があれば外野からの口出しを封じることができる
親が遺言書を残さずに亡くなった場合、遺産分割協議をするわけですが、相続人の意思ばかりが話し合いのテーブルに乗るわけではありません。
相続人の妻など、本来であれば親の遺産については相続人とならない、いわば「外野」が口出ししてきて、親の相続についての話し合いの場を荒らすことがよくあるのです。
たとえば、兄弟の仲が良かったとして、兄弟間では「みんな均等に分けよう」という話し合いで合意していたのに、長男の妻が「私ばかりがお義父さんの介護をしていたのに、何で他のひとと同じ分しかもらえないの!」と言ってきたり、三男の妻が「うちは結婚式を挙げていない。ほかの人たちは豪華な結婚式を挙げられるように親から出してもらっているのに、ズルイ!」などと口出ししてきたとき、それぞれの夫である兄弟は、それでも兄弟だけの話し合いで「均等に相続しよう」という決着を貫きとおすことができるでしょうか。
しかし、親が遺言書を残してくれていた場合には、遺言書の内容に従って相続手続きをすれば良いので、「外野」は、もし遺言書の内容に不平不満があったとしても相続について口をはさむ余地は全くありません。
4.遺言書があれば「争族」を最小限に押さえ込むことができる
親が遺言書を残さないで亡くなった場合、相続人は、親が残した財産の全てについて遺産分割協議をしなければなりません。
先述のとおり、相続人全員が集まって、全員が合意しなければならない遺産分割協議は非常に大変です。
特にいろいろな事情を抱えた家族であれば、遺産分割協議は大変紛糾することになります。
相続人は、いつ終わるか分からない相続の話し合いに強いストレスを抱えて長い時を過ごすことになります。
しかし、親が遺言書を残してくれている場合、相続人は親が残した遺言書に従うしかありません。
遺言書があれば、話し合いをしなくてよいというのは前述のとおりです。
仮に、親の遺言書が、相続人の「遺留分」を侵害しているような場合であっても、トラブルの問題点は「遺留分」に絞られますから、「争族」は長く続くようなことなく済みます。
遺言書があれば「争族」を最小限に押さえられるわけです。
5.遺言書があれば、親が亡くなっても円満な兄弟姉妹の関係を継続できる
相続というのは、簡単に言ってしまえば、突然湧いて出たお金の分け方を決めることです。
この世の中、お金に関する話し合いほど難しいものはありません。
あなたが、もし、あるところから突然湧いたお金の中から「100万円」もらえたとします。
100万円といえば大金。
間違いなく「嬉しい」はずです。
しかし、同じところから湧いたお金を、「別の人が200万もらっている」と知ったらどうでしょう。
「嬉しい」が「どうしてあいつだけ多いのか」という不満に変わるのではないでしょうか。
これは、たとえ仲の良い兄弟姉妹であったとしても同じです。
相続の時の小さなやりとりによって、兄弟関係がギクシャクして、そのままずっと修復できないなんてことも珍しくありません。
親が遺言書を残しておいてくれれば、遺産分けの話し合いをしなくて済むわけですから、円満な兄弟姉妹関係を壊すようなこともなくて済みます。
遺言書は親の最後の愛情というわけです。
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