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自筆証書遺言を作るときに気をつけること

自筆証書遺言のメリットとデメリット

自筆証書遺言は、その気になれば、いつでもどこでも作成できる「手軽さ」が最大のメリットです。
しかし、その分、「偽造・変造」の危険があります。
実際には「偽造・変造」されなかったとしても、「偽造されたのではないか。」という疑いが残りますから、もめ事へと発展する余地があるということです。

また、手軽に作れる反面、法律的な要件を満たさずに、遺言書が無効とされてしまう場合もあります。
こうしたリスクが、自筆証書遺言のデメリットといえます。

自筆証書遺言のデメリットを解消するために

自筆証書遺言のデメリットを解消しながら、しっかりした内容を残すためには、次の5つのことに気をつけなければいけません。

自筆証書遺言の書き方

【1.全ての文を自分自身で書く】

法律に、「自筆証書遺言によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、それに印を押さなければならない。」(民法968条1項)と定められています。
この文字どおり、遺言書を残す本人が、日付けも含めた全ての文章を自分自身で書かなければいけないということです。

その理由は、遺言書を残した人が、自分の意思で遺言書を残したんだということを明確にするためです。
ですから、次のような遺言書は無効となってしまいます。

  • 本人が話した内容を、他人が書く・・・一部の代筆でも認められません。
  • パソコンで作成する・・・全てを自分の手で書かなければいけません。
  • 音声を録音したものを遺言書にする・・・音声は遺言書として認められません。

ここで、気をつけたいことがあります。
高齢になると、「文字を書く」という作業は私たちが思っている以上に大変なことです。
もし、病気などで手の震えがあるとしたらなおさらです。

そうすると、例えば高齢の親が遺言書を書いたときに、その筆跡が子の知っている親の筆跡と違うために、本当に本人が書いた遺言書であるかどうかをめぐって、相続人の間で争いになるおそれがあります。
しっかりした自分の筆跡で書くことができるように、体調の良いときに書いた方がよいでしょう。
もし、それでも文字を書くのが大変だと感じるのであれば、自筆証書遺言ではなく「公正証書遺言」を選択した方がよいでしょう。

自筆証書遺言は全文を自分で書く

【2.遺言書を書いた日付を書く】

日付が書かれていないと、その遺言書は無効になってしまいます。
たとえ内容にはまったく問題がなかったとしても、無効になってしまうのです。
せっかく残した遺言書が、法律的に無効にならないように注意しなければいけません。

遺言書に残す日付は、「平成27年3月8日」のように、「年、月、日」まで正確に書く必要があります。
「平成27年3月吉日」という書き方は、正確な日ではないので、無効とされてしまいます。

なぜ、日付が大切なのでしょうか。
それは、その日付の時に、遺言書を書いた人がきちんとした判断能力があったのかどうかを判断するためです。
もし、その遺言書を残した人が、重度の認知症にかかった後にお亡くなりになったとすると、遺言書を書いた日付がなければ、その遺言書がしっかりした意思で書かれたものかどうか分からなくなってしまうからです。

また、法律では、「2つ以上の遺言書が出てきた場合は、一番新しい遺言書を有効なものとする。」ことを定めています。(民法1023条)
そのような場合には、遺言書が書かれた日付が判断基準になります。

こうした理由で、日付まで自分自身の手でしっかり書いておく必要があるのです。

遺言書には日付を書く

 【3.戸籍上の氏名を書く】

遺言書を残した人物が誰であるのかを明らかにするため、遺言書には氏名を自筆しなければなりません。
ここで気をつけることは、戸籍に記載されているとおりに正確に氏名を書くということです。
戸籍の氏名が旧字で記載されているなら、旧字で書かなければいけないということです。

私は「宮澤優一」が正確な氏名ですが、楽をして「宮沢優一」と書いてはいけないということです。
また、ニックネームや芸名もいけません。

なぜ、戸籍上の氏名を書かなければいけないのでしょうか。
正直、旧字でなくて新字で書いたり、ニックネームや芸名を書いたとしても、それですぐに無効と判断されるわけではありません。
しかし、この場合、遺言書に対する信憑性が低くなってしまうことが問題なのです。
「本当に本人が書いたのか?」という余地を残してしまうことになるということです。

相続手続きの際に、金融機関や法務局等に、「この氏名、ニックネームの者が本当に本人と同一人物である」ことを証明しなければならなくなり、手続きが面倒になってしまうことも考えられます。
ですから、遺言書を書くときは、戸籍を取り寄せてじっくり確認して書くくらいの慎重であった方が良いでしょう。

遺言書には戸籍上の氏名を書く

【4.印鑑を押す】

氏名を書いたら、その横に印鑑を押しましょう。
もし、遺言書が2枚以上になった場合は、遺言書をホチキスなどで綴じて用紙のつなぎ目に印鑑を押して契印しておきましょう。
この時、印鑑は手持ちの認印でもかまいません。

しかし、できることなら実印を押して、遺言書を印鑑登録証明書と一緒に保管しておいた方がより良いです。
その理由は、遺言書を書いたのが本人であり、その本人が自分の意思で書いたのだということが、第三者に対してより確実に証明できるからです。
契印についても、特に法律で決められているわけではありませんが、複数枚の遺言書が差し替えられたりしていないことをより確実に証明できるからです。

自筆証書遺言は、冒頭に書きましたとおり、「偽造されたのではないか。」という疑いが残り、もめ事へと発展する余地が残ってしまいます。
その余地をできる限り小さくすることが自筆証書遺言を書くときのポイントといえます。
実印を用いたり、印鑑登録証明書を添えたり、契印をするなどといった手間を加えることで、遺言書の証拠能力を高めることができます。

遺言書には実印を押印

【5.訂正をしない】

遺言書を書いているときに、書き間違いをしてしまったら、その遺言書は書き直した方が良いです。
その理由は、自筆証書遺言の訂正方法は、法律で厳格に定められているのですが、その方法がとても複雑だからです。
その法律の条文がこれです。

「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」(民法968条2項)

何だかすぐには理解できないですね。
少なくとも、自筆証書遺言の訂正は、一般の文書を訂正するのと違い、とても複雑だということは間違いありません。
訂正の方法を間違えたために、せっかくの遺言書が無効になったり、「偽造されたのではないか。」という疑いを残して、もめ事へと発展する余地を残してはもったいないです。
ですから、手間ではありますが、もし書き間違えてしまったら、その遺言書は破り捨てて、遺言書を最初から書き直した方が良いでしょう。

遺言書は訂正はしない

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