- なんでも相談
介護をすると遺産相続で寄与分は認められますか?
私の夫は、晩年病気がちとなり、長らく病気療養した後に亡くなりました。
その病気療養の間、介護が必要となった夫を、ずっと私が介護してきました。
実は、夫には離婚した先妻がおり、その先妻との間に娘が2人います。
とはいっても、その娘2人は私のことを毛嫌いしていることもあって、夫のところを尋ねてくることはほとんどありませんでした。
夫が遺した財産について相続手続きをするためには、夫の遺産相続について、この娘2人と話し合いをしなければなりません。
私としては、夫の娘ですから相続の権利があることは承知していますが、全く夫の世話に関わってこなかった娘達の態度に釈然としません。
そして、私はこれから一人で生活しなければなりません。
遺産相続には寄与分というものがあって、亡くなった方に対して貢献した場合には、他の相続人よりも多くの相続分が認められると聞きました。
私が夫の介護に尽くしてきたことは、遺産相続で寄与分として認められるのでしょうか。
単に夫の介護をしただけでは寄与分は認められません。寄与分が認められるには・・・
あなたが夫の介護(療養看護といいます)に尽くしたことにより、ヘルパーや家政婦に費用を支払う必要がなくなって、夫の財産が維持されたり、夫の財産が減るのを防止できた場合で、更に療養看護の内容が、「夫婦だったら当然だよね。」という通常の協力義務の程度を超えている場合には、夫の遺産相続において寄与分として考慮されます。
寄与分とは
寄与分とは、相続人の中に亡くなった方(被相続人)の財産の維持または増加について特別の寄与をした者がある場合に、その者に法定相続分以上の遺産を取得させる制度のことをいいます。
ご質問の場合、妻と娘2人の法定相続分は、それぞれ妻2分の1、娘4分の1ずつですが、妻に寄与分が認められるときは、妻は2分の1以上の割合の遺産を取得することができます。
民法904条の2に定められている寄与行為には次のような類型があります。
1.被相続人の事業に関する労務の提供(被相続人の営む農業、商業などの事業に、相続人が従事する場合です。)
2.被相続人の事業に関する財産上の給付(被相続人の営む事業について相続人が資産を提供したり、被相続人に代わって債務を弁済したりする場合です。)
3.被相続人に対する療養看護(病気になったり怪我をした被相続人を看護したり、身のまわりの世話をする場合です。)
4.その他の方法(①~③以外に、被相続人の財産を維持または増加させる行為をいいます。)
ご質問は、3の場合にあたるかどうかが問題になります。
被相続人に対する療養看護の程度と寄与分
被相続人に対する療養看護は、次の2つの場合が考えられます。
・相続人が、自ら尽くして療養看護を行う場合
・相続人が、自分以外の人に療養看護をさせる場合
いずれの場合も、「相続人が療養看護をすることによって、被相続人がヘルパーや家政婦に費用を支払う必要がなくなって、夫の財産が維持されたり、夫の財産が減るのを防止できた」ことが必要です。
自分以外の第三者に療養看護をさせる場合は、その費用を被相続人の財産から支出するのではなく、寄与したことを主張する相続人が負担することが必要です。
次に、被相続人に対する療養看護は、相続人との身分関係から当然期待される範囲のものは寄与分とは認められません。
夫婦の間には互いに同居し、協力し、助け合う義務があるからです。
親子や兄弟姉妹の間にも、互いに助け合う義務があります。
そうした義務の範囲内での行為は、特別の寄与にはならないと考えられています。
ご質問の場合ですが、もし、「あなたが病気がちの夫の介護をしてきたけれど、その大部分をヘルパーや家政婦の手に任せ、その費用は介護保険や夫の年金で支払っていた」といった場合には、あなたに夫の療養看護について特別の寄与があったとは、認められない可能性が高いといえます。
あなたが配偶者として、「夫婦だったら当然だよね。」という通常の協力義務の範囲をこえて、献身的に夫の療養看護に尽くしたといえる場合に、初めて特別の寄与として評価され、遺産相続において寄与分が認められる可能で可能性があります。
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