- コラム
遺言書が自宅で見つからなかった場合に探して欲しい「公証役場」
公正証書遺言なら、すぐに見つけられます!
お亡くなりになった方が、遺言書を公証人が作成する「公正証書遺言」として残していた場合、その遺言書は公証役場に保管されています。
ですから、もし自宅で遺言書を見つけられなかった場合には、公証役場で遺言書があるかないかを確認しましょう。
もしかしたら、無いと思っていた遺言書が見つかるなんてことがあるかも知れません。
公証役場でどうやって確認するの?
お亡くなりになった方の相続人が公証役場に行き、名前や生年月日や続柄などを伝えます。
すると、「公正証書遺言検索システム」を使って検索してもらうことができるのです。
基本的に、遺言を作った人が130歳くらいになるまで、その遺言書は公証役場に保管されています。
自宅で遺言書を見つけられなかった場合には、公証役場で見つけることができるかも知れません。
なお、公正証書遺言検索システムを使って遺言書を探すことができる人は限られています。
遺言を残した人が生きている間は、本人しかできません。
遺言を残した人が亡くなった後も、「法定相続人」「遺言執行者」などに限られています。
公正証書遺言検索システムを利用するために必要なもの
公正証書遺言検索システムを利用するために必要なものは、次のとおりです。
これらを公証役場に持参します。
全国どこの公証役場でも構いません。
- 亡くなった方の戸籍謄本など(亡くなった方が本当に死亡していることの証明と、システムを利用しようとしている人が亡くなった方の相続人であることの証明ができるもの。)
- システムを利用しようとする人の免許証など(本人確認ができるもの。)
これらを提出して、遺言を探したいと伝えると、公証人は「公正証書遺言が残されているかどうか」を調べてくれます。
そして、もし公正証書遺言が残されていれば、「保管されている公証役場」を教えてくれます。
公正証書遺言検索システムの上手な活用方法
この「公正証書遺言検索システム」は、遺言書を残そうとする人にも上手な活用方法があります。
もし、遺言書を残そうとする時に、「内容を誰にも知られたくない。」とお考えであれば、ぜひ参考にしてください。
まず、行政書士などの専門職を証人として公正証書で遺言書を作成します。
そのあと、その時に渡された公正証書遺言の謄本等を処分してしまいます。
そして、相続人の1人に対して「自分がこの世を去ったら、公証役場で遺言書を確認して欲しい。」と伝えておけば良いのです。
そうすれば、誰にも遺言書の内容を知られることなく、その心配もなく、遺言書を残すことができます。
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公正証書遺言を遺言者が作成し、そのコピーおよび原本の保管場所もわかっているのですが、
小生(証書上の受益者)には兄弟がいて、一人はこの存在をしっていますが、もう一人は知りません。
この遺言ではすべて小生に遺贈することになっているのですが、将来(不幸にして遺言者が
なくなった場合)、彼らに遺産の一部を無税で贈与することは可能ですか?
または、この遺言の所在を全く通知しなければ、遺言の実施は行われない(すなわち、小生だけが受益すること)ことになりますか?
貴見お伺いいたしたくメールしました。
野原
相続と遺言書に関するご質問をいただき、ありがとうございます。
まず最初に、ご質問の内容を整理させていただきます。
1つ目のご質問の趣旨は、「あなたが遺言書によって財産を受け取った後、あなたからその財産を他の相続人に無税で贈与することができるかどうか。」
2つ目のご質問の趣旨は、「遺言書があることを他の相続人に知らせないと、その遺言書は実現されないのかどうか。」
これらについて回答いたします。
【1つ目のご質問についての回答】
結論を申し上げますと、「あなたが兄弟に贈与する額が、年間110万円以内であれば贈与税はかからない。年間110万円を超える場合には贈与税がかかる。」ということになります。
つまり、どなたかの遺言書により、あなたが財産を受け取った時点でその財産はあなたの財産となりますから、相続や遺言書は関係なく、「あなたが兄弟に贈与する」ということになるのです。
ですから、贈与税のルールが適用されることとなり、上記の結論となります。
もし、あなたがご兄弟に対して贈与を検討されているのであれば、年間110万円までは贈与税がかかりませんから、計画的になさった方が良いと思います。
【2つ目のご質問についての回答】
今回、残されていた遺言書が公正証書遺言とのことですから、自筆証書遺言のように家庭裁判所で「検認」という手続きを行う必要がありません。
「検認」の手続きは、家庭裁判所が全ての相続人に「この日に遺言書を確認するから来られる人は集まって」という通知を出します。
そのうえで、集まった相続人の前で遺言書を開封し、その遺言書が確かに存在することを確認します。
自筆証書遺言の場合、この検認手続きを行わなければ効力を持ちませんから、遺言書は実現できないことになります。
一方で、公正証書遺言は「検認」が不要です。
そのままで、財産を動かす効力を持っています。
ただ、その公正証書遺言に遺言施行者(遺言の内容を実現する人)が指定されている場合、その遺言執行者は全ての相続人などに対して、遺言者が亡くなったこと、遺言執行者に就任したことなどを通知するのが通常です。(特に義務というわけではありませんが、大きな財産を動かす以上、通知するが適切ということです。)
ですから、通知しなくても、遺言書の内容を実現することは可能です。
しかしながら、あなたが遺言書が残されていることを知りながら、意図的に破棄、隠匿したとなれば、あなたが「相続欠格者」に該当し、相続人になれない恐れがあります。
「隠匿」とは、人の目に触れないよう隠してしまうことです。
もし、自分の利益のために、遺言書を「隠匿」した場合、民法で規定した〝相続欠格〟に該当するため、相続権が剥奪されることになるのです。
その点には充分にご注意なさってください。