①相続の権利がある人が、誰かを正確に確認しましょう
相続の手続きを進めるにあたっては、「誰が相続人になるのか」を押さえておく必要があります。相続には順位があり、意外な人が相続人だったり、相続人にならなかったりします。
法律が定める相続人(法定相続人)の種類は、『配偶者相続人』と『血族相続人』の2つです。
2つの違い
- 配偶者相続人
- まず、亡くなった方の「配偶者(夫や妻)」は、常に相続人になります。
仮に不仲で10年間別居している夫婦だとしても、婚姻して1日目の夫婦であったとしても、戸籍上の夫婦であれば常に相続人になります。逆に夫婦同然の生活をしていたとしても、入籍をしていない「内縁関係」の男女は、お互いに相続人にはなりません。
- 血族相続人
- 「配偶者」のほかに、「血族」が相続人になります。「血族相続人」には、次のとおり優先順位があります。
◎第1順位:亡くなった方の「子」
(子は、養子や前婚時の子も含みます。子が先に亡くなっている場合には、さらにその子、つまり孫)
◎第2順位:亡くなった方の「父母」
(「父母」が先に亡くなっている場合には、「祖父母」)
◎第3順位:亡くなった方の「兄弟姉妹」
(「兄弟姉妹」で先に亡くなった方がいれば、その「子」、つまり甥や姪)
先順位の相続人がいない場合に、後の順位の人が相続人になります。
つまり、第1順位の方がいる場合、第2順位、第3順位の方は相続人にはなりません。ですから、一般的には、「配偶者」と「子」が相続人となることが多いです。
「子」がいなければ、「配偶者」と「父母」が相続人。父母がともに亡くなっていれば、「配偶者」と「兄弟姉妹」が相続人。その時に「兄弟姉妹」が亡くなっていれば、「配偶者」と「甥や姪」が相続人となるわけです。亡くなった方の「兄弟姉妹」と「子」が同時に相続人になることはあり得ないということです。
なお、相続人が誰かを正確に確認し、その相続関係を証明するには、少なくとも「亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本等」を収集しなければなりません。
②相続される財産は、どんなものがあるかを確認しましょう
原則として、亡くなった方が、亡くなった時に持っていた財産全てが相続されます。亡くなった方名義のもので、現金に換えることができるものは、すべて相続財産になるということです。
例えば、お財布の中に入っていた現金、預貯金や株式、自動車などの動産、土地や建物などの不動産、ゴルフ場の会員権、絵画、貴金属、骨董品、これらはもちろん相続財産です。他にも、誰かと土地や建物の賃貸借契約をしていれば借主・貸主といった立場も相続されます。
プラスの財産ばかりではありません。借金や連帯保証人といったマイナスの財産も相続されます。
そして、法律上では次のように相続分が定められています。
③相続トラブルを避ける「“争族” 対策」を考えましょう
実は、“争族”の『タネ』は、どこのご家庭にもあるのです。
「ウチは財産がないから」「みんな仲良しだから大丈夫」
相続の話をすると、多くの人がこう言って他人事のような顔をします。しかし、それは大変な誤解です。実際、相続が裁判にまでなっている泥沼事例のうち、75%が総資産5,000万円以下という一般的な家庭で起きています。
そして、仲が良くても揉めるのが相続です。住宅ローン、住宅の修繕、教育費、自動車の購入など、相続を受ける人、それぞれにお金にまつわる事情があります。経済的な事情が絡む中で相続という「お金の話」を前にすると、人間関係は一気に変わってしまうことがあるのです。
相続手続きのためには、法律で決められた相続人全員で、遺産分けの話し合いをしなくてはなりません。そして、相続人全員が合意し、相続人全員が「遺産分割協議書に実印を押す」必要があります。「全員」が相続手続きに関与して、合意しなければいけないというのが「争族」のタネなのです。
例えば、相続人の中に「亡くなった親の介護をしていた子」がいたとしたら、その人は「私の労に報いが欲しい」と主張したくなるものです。反対に「亡くなった親から住宅資金の援助を受けていた子」がいたとしたら、他の相続人は「ズルい」と感じるかもしれません。すると、遺産分けの話し合いは、額面の問題ではなく、感情的なトラブルへと発展していくのです。
また、相続人や関係者に「自己主張の強い人」「前婚の時の子」「連絡の取れない人」がいると、遺産分けの話し合いはより難しくなります。
それを簡単にしてくれるのが「遺言書」です。
亡くなった方が遺言書を残していれば、その遺産は、遺言書のとおり分け合うことになります。つまり遺産分けの話し合いをする必要がないのです。仮にその内容に不満がある相続人がいたとしても「親の意思だから従おう」と円満・円滑な解決に繋がりやすくなります。
遺言書の他にも、争族を避けるための相続対策は色々ありますが、どの対策も、本人の「脳」と「身体」が健康でなくなると困難になります。特に認知症などで判断能力が衰えてしまってからでは、せっかくの対策が、法的に無効とされてしまう恐れもあります。
④相続税のことを考えましょう
相続税は必ずかかるわけではありません。
相続財産に対して、「基礎控除」があり、この「基礎控除」の額を超えた部分に、相続税が課税されます。
基礎控除の額は、現在
3,000万円 +(600万円×法定相続人)
で計算します。
つまり、法定相続人が3人いる場合、亡くなった方の遺産総額が4,800万円を越えていなければ、相続税は1円もかからず、申告も不要です。
実際、亡くなった人のうち相続税の申告・納税が必要な割合を示す「課税割合」は、2018年のデータでは8.5%程度です。つまり、亡くなった方のうち、相続税が課税された方の数は100人のうち約9人ということになります。
「相続」対策と「相続税」対策は全く別物です。
先述のとおり、「相続」対策は全ての方に必要ですが、「相続税」対策は財産をたくさん持っている人に関係のあるものといえます。
どういった財産を、どれだけ持っていて、その金額がどれくらいになるのかを一覧にしてみましょう。この一覧のことを「財産目録」といいます。
「財産目録」を作ると、相続税がかかりそうか、そうではないかの見当がつきます。
もし、相続税がかかりそうであれば、節税や納税資金を考えておきたいものです。生前贈与や生命保険の活用など、相続税対策にも色々あります。ただし、どの対策も、本人の「脳」と「身体」が健康でなくなると困難になります。
ほんの一例ですが、こんな具合に。
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