- コラム
相続放棄の必要がないのに、相続放棄しようとしていませんか
あなたがやりたいのは「相続放棄」?それとも「財産放棄」?
「相続放棄をした方がよいのでしょうか。」という相談を受けることがあります。
例えば次のような事例です。
Aさん(70代の女性)からの相談。
2ヶ月ほど前にご主人がお亡くなりになって、その相続手続きについてのお困りとのことでした。
お子さまが2人いるとのことで、「自分自身はご主人様の財産は一切承継せずに、子どもたち2人に財産全部を分けたい。」とお考えでした。
その方から、「やはり私が一切の財産を承継しないためには、相続放棄をした方が良いのでしょうか。」とお尋ねを受けたのです。
夫が亡くなってから3ヶ月以内に手続きしなければならないということもご存じで、少し焦っておられる様子でした。
多額の借金がないのであれば、相続放棄をする必要はない
Aさんからの相談の答えを申し上げますと、「お子さま2人と話し合いをして、ご主人の財産の全てをお子さま2人が承継するという内容の遺産分割協議書をきちんと作成すれば、家庭裁判所で相続放棄する必要はない。」ということになります。
つまり、Aさんはお子さま2人との遺産分割協議を行って、その場で「私は財産は全部要らない。2人で分けて。」と伝えて、財産放棄をするということなのです。
この財産放棄は、遺産分割協議がまとまれば良いわけで、相続放棄のように家庭裁判所の手続きなどは一切必要ありません。
相続放棄というのは、多くの場合、故人に借金が多くてどうにもならない状況の時に行われるものです。
ところが、Aさんのように、ご主人に多額の借金があるわけでもないのに、「財産を全部承継しない」という考えを「相続放棄」という言葉に結びつけてしまう方が多くおられるのではないかと思います。
世間一般で言われる相続放棄は、実は財産放棄であることがほとんどではないかと思います。
プラスの財産、マイナスの財産を早くに把握して、多額の借金がないのであれば、相続放棄は必要ありません。
Aさんのように、「プラスの財産について私は一切承継しなくて良い。」ということであれば、遺産分割協議で財産放棄をすれば良いのです。
相続放棄と財産放棄のちがい
それぞれのちがいをまとめてみます。
相続放棄
- プラスの財産・・・承継しません。
- マイナス財産・・・承継しません。
- 地位・・・最初から相続人ではなくなります。
- 手続きの方法・・・故人が亡くなってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをする必要があります。
財産放棄
- プラスの財産・・・承継しません。(その為の財産放棄です。)
- マイナス財産・・・承継します。
- 地位・・・相続人のままです。
- 手続きの方法・・・遺産分割協議で合意できれば良い。
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