- コラム
行方不明の相続人がいる場合、相続手続きはどうしたら良いの?
行方不明の相続人がいると、そのままでは相続手続きができません!
亡くなった方の遺産をどのように分けるかという話し合いを「遺産分割協議」といいます。
遺言書が残されていない場合、相続人全員が遺産分割協議に参加して、相続人全員が協議内容に合意しなければ、遺産分割協議は成立しません。
遺産分割協議が成立しないということは、相続手続きができないということを意味します。
そのため、相続人の中に行方不明の方がいると、遺産分けの話し合いができません。
「アイツは行方不明だから、アイツ抜きで遺産分けをしよう。」と言って、行方不明の相続人を遺産分割協議のメンバーから外すことはできないのです。
仮に、行方不明の相続人を協議から外して話し合いがまとまったとしても、遺産分割協議書には相続人の署名と実印(印鑑証明書に対応した印鑑)の押印が必要になりますから、遺産分割協議書が作成できません。
そうなると、預貯金口座の解約や不動産の所有権移転といった相続手続きができず、「亡くなった方の財産はそのまま手をつけられない」ということになってしまいます。
まずは、行方不明の相続人のために「不在者財産管理人」を選任するところから
行方不明の相続人がいる場合でも、遺産分割協議を行う方法があります。
その方法は、2段階です。
まず、家庭裁判所に「不在者財産管理人の選任」を請求し、不在者財産管理人を選任するところから始まります。
「不在者財産管理人」というのは、 行方不明となっている方の代わりに、その方の財産を管理する人のことです。
「不在者財産管理人」は、相続人の中に1年以上行方不明の人がいる場合に選任してもらえます。
通常、相続人とは利害関係のない親族を「不在者財産管理人」の候補者として家庭裁判所に請求すると、その人が選任されることが多いようです。
もし、適当な候補者がいない場合には、家庭裁判所が弁護士などの専門家を選任します。
「不在者財産管理人の選任」を家庭裁判所に請求する方法は、こちらをご参照ください。
⇒「不在者財産管理人の選任について」(裁判所ホームページより)
そして、不在者財産管理人が家庭裁判所から「権限外行為の許可」をもらう
家庭裁判所から「不在者財産管理人」が選任されたとしても、選任されただけでは行方不明の相続人の代わりに遺産分割協議に参加したりすることはできません。
「不在者財産管理人」というだけでは、遺産分割協議に参加する権限はないのです。
そこで、家庭裁判所に「権限外行為許可の申立て」を行います。
この許可が下りると、不在者財産管理人は、行方不明になっている者に代わって遺産分割協議に参加することができ、遺産分割協議書に署名押印することができるのです。
不在者財産管理人が遺産分割協議に参加する際の注意点
ただし、相続人本人が行方不明であるからと言って、行方不明の相続人に不利となる遺産分割協議はできません。
家庭裁判所は、 「不在者財産管理人」が、行方不明の相続人にとって不利な内容になるような遺産分割協議をしないように、遺産分割協議の内容をチェックします。
「不在者財産管理人」が選任されていても、行方不明の相続人にとって不利な遺産分割協議はできません。
つまり、行方不明のだからといって、その相続人の相続分を「0」にしてしまうことはできないのです。
法律上「死亡した」とみなす「失踪宣告」という方法もある
もし、行方不明の相続人が次のような状況であれば、家庭裁判所に「失踪宣告の申立て」をして、「失踪宣告」をしてもらうという方法もあります。
「失踪宣告」というのは、生死が不明となっている者に対して、法律上「死亡した」とみなす効果を生じさせる制度です。
ですから、行方不明の相続人が、家庭裁判所から「執行宣告」された場合、その相続人は死亡したとみなされるわけですから、その相続人を除いて遺産分割協議をすることができるのです。
【失踪宣告の申立てをできる状況とは】
- 生きているのか死んでいるのか分からない状況が、最後に音信があったときから7年以上続いている。(普通失踪)
- 戦争、船の沈没、震災などの危難に遭遇して、その危難が去ってから、1年以上生きているのか死んでいるのか分からない状況が続いている。
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