- コラム
モメない遺言書を作るための6つのポイント
遺言書の内容は、単に「誰に何をあげる」では足りない!
遺言書は、ただ単に「誰に何をあげる」といったことを書けば良いのかというと、それでは足りません。
遺言書の目的は、「相続で家族がモメないこと」そして「スムーズに相続手続きが行われること」です。
せっかく苦労して遺言書を残しても、遺言書の内容が足りないために、相続トラブルのもとになったり、相続手続きの支障になるようでは、意味がありません。
あなたの想いを正確に伝え、家族に幸せを届けるための遺言書を残すためには、6つの大きなポイントがあります。
1.遺言書には「その他の財産」を誰に相続させるのかを書く
基本的に、遺言書には「誰に何を相続させるのか」を書いているものと思います。
そこに書いたもの以外の財産を誰に引き継がせるのかも記載するのです。
例えば、パソコンや高級家具や高級時計など、細々としたものです。
相続人の中には、こうした細かなものにもこだわりを持つ方がおられます。
この記載がない場合、遺言書に記載されなかった相続財産は遺産分割の対象となります。
つまり、相続人全員で話し合いを行って、誰が相続するのかを決めなければならなくなってしまいます。
2.遺言書には祭祀主催者(お墓などを引き継ぐ人)を誰にするか書く
祖先の祭祀のための財産を誰が引き継ぐかということも、遺言書で指定することができます。
祖先祭祀のための財産というのは、家系図、位牌、お墓などのことです。
指定がない場合、慣習に従って引き継ぐ人が決まります。
慣習がよく分からないという場合には、家庭裁判所の審判で決まります。
お墓をの承継をめぐる争いが家族・親族の間で始まってしまうと、なかなか解決を見ることなく、大変根深いものになってしまいます。
お墓を所有している場合には、遺言書に祭祀主催者を指定した方が、モメごとの防止になります。
3.遺言書には「逆縁」のような万が一が起きたらどうするかを書く
親より先に子どもが亡くなってしまうことを「逆縁」といいます。
親が子どもに遺言書で財産を相続させようと思っていたのに、先に子どもの方が亡くなってしまうということもあり得ます。
この「逆縁」のような万が一に備えて、そのような場合にはどうするのかを書いておきます。
これを「予備的遺言」といいます。
例えば、「土地を長男に相続させる。私が死亡したとき長男が既に死亡していたら、次男に相続させる。」といった内容です。
子どもだけではなく、妻にも同じことが言えます。
妻に財産を残そうと思って遺言書を書くとするなら、その妻が自分より先に亡くなってしまったら、その分をどうするのか。
そういった万が一が起きたときにどうするのかを書いておくのです。
もし、「妻に相続させる」という遺言書を残したのに、先に妻の方が亡くなっていた場合、「予備的遺言」がないと、その財産は遺産分割の対象となり、相続人全員で話し合って、誰が相続するのかを決めなければならなくなります。
4.遺言書には遺言執行者を誰にするか書く
遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実現するために、様々な手続きを行う人のことです。
遺言執行者には、相続財産の管理や遺言書の内容を実現するために必要な全ての行為をする権利と義務があります。
遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者ひとりで遺言書の内容を実現することができます。
遺言書に遺言執行者の指定がない場合、金融機関などから、所定の用紙に相続人全員の署名、実印の押印、印鑑証明書の提出などを求められることがあります。
そうなると、当然手間がかかりますから、遺言書の内容を実現するのに時間が掛かることになってしまいます。
時間が掛かるということは、その分、モメごとの火種を残しておくことになってしまいます。
なお、遺言執行者は、未成年者と破産者以外であれば誰でもなることができます。
相続人も遺言執行者になれるということです。
しかし、一般の方が遺言執行者として相続手続きをする場合、手続きが難しかったり煩雑であったり、書類を取り寄せたり準備する時間がないということも多くあり、大きな負担ともなり得ます。
また、相続人が遺言執行者になると、感情的な問題から相続トラブルが起きたり、相続手続きの支障になることも考えられます。
そのような場合が想定されるのであれば、行政書士や弁護士等の法律職に遺言執行者を依頼するのもひとつの方法です。
5.遺言書には、一言、気持ちを書き添える
遺言書に今の気持ちなどを書くことを「付言」といいます。
「付言」には法的な効力はありません。
しかし、遺言書を残した方の気持ちが書かれていることで、遺言書の内容が実現しやすくなる効果が期待できます。
例えば、「家族みんなに感謝している。特に長男には介護で世話になり感謝に堪えない。その分を相続にも考慮した。今後も私の家族みんなに仲良く暮らして欲しい。」などといった内容です。
相続分に差があったとしても、遺言書を残した方の気持ちを知ることができれば、みんなが納得してくれる可能性が高まるのではないでしょうか。
ただし、付言を書く場合は、短めに感謝の言葉を添える程度にとどめた方が良いでしょう。
間違っても、特定の相続人のことを悪く言うような内容は書かない方が無難です。
なぜなら、特定の相続人を非難するようなことを書くと、悪く書かれた相続人が気を悪くして、遺言書にケチをつけて来る可能性があるからです。
もし、その人が「この遺言書は無理矢理書かされたものに違いない!」などと主張した場合には、遺言書が本当に本人の意思で書かれたものかどうかをめぐる争いに発展するおそれがあります。
6.遺言書には実印で押印する
法律上、遺言書には押印しなければならないとされています。
しかし、その印については特に法律により指定されていないので、認印でもかまいません。
しかし、遺言書でモメる原因のひとつに「本当に本人の意思で書かれたものかどうか。」「無理矢理書かされたのではないのか。」という疑いを持たれることがあります。
遺言書が本人の意思で作られたものであることを確実に証明するために、実印を押印した方が良いでしょう。
さらに遺言書と一緒に、その実印の印鑑登録証明書を封書に同封しておけば、より一層、本人の意思によって作った遺言書であるという信憑性を高めることができます。
信憑性がたかくなれば、相続がモメごとに発展する可能性は低くなります。
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